都政新報に市川市長選挙に関する高橋亮平の寄稿が掲載

今朝の都政新報に高橋亮平の寄稿記事が掲載されました。
都政新報は東京都の職員、都内の行政職員などに読まれている専門紙です。
市川市長選挙を通じての地方自治や行政、首長選挙の課題を考える参考にしてください。

 

以下掲載記事

 

都政新報(2018年5月15日)

 

民主主義の質の向上を
千葉県市川市長選再選挙から考える
一般社団法人日本政治教育センター代表理事 高橋亮平

4月22日の投開票でようやく決着が付いた千葉県市川市長選。昨年11月の選挙では立候補した5新人のうち誰も有効得票総数の4分の1以上を獲得できず、再選挙が決定。その後も、選挙結果の無効を求める異議申し出もあり、再選挙が延期され、市長不在が長期化した。実際に昨年11月の同選挙に立候補し、4月の再選挙では他候補を応援した高橋亮平氏に、こうした首長選挙の仕組みや在り方について課題を聞いた。
(編集部)

 
■自治体における民主主義の課題
 
23区に隣接する千葉県市川市では、再選挙、異議申し立て、長期市長不在など、首長選挙に関連して極めてまれな問題が重なった。こうした事例をきっかけに地方自治や首長選挙について制度面も含めた課題と今後の可能性を考えてみたい。
2017年11月26日に実施された市川市長選挙には筆者も含め5人の候補が乱立。各候補の得票数が拮抗し、最多得票者も公職選挙法95条に定められた当選に必要な法定得票である有効投票の25%に達せず再選挙となった。
首長選挙が再選挙となったのは1979年の富津市長選(千葉県)以来6例しかないが、東京都でも石原知事が初当選した99年の知事選では有力候補者が乱立し、一時は再選挙の可能性も予想されたなど他自治体においてもあり得ることだ。
制度上、法定得票に達しない限り再選挙は再々選挙……と繰り返されることになる。市川市では1回の選挙に1億円規模の財政負担があるとされ、有権者からも再選挙になったことの批判と、再々選挙にならない様にすべきとの声もあった。
再選挙の可能性をなくすには、制度的な改正の他に政治家同士で候補者調整を行う事が考えられるが、個人的には選挙の際には既に有権者に選択肢がない旧態然とした政治にこそむしろ大きな課題を感じる。国政での政局や政治家同士の利権争いではない受け皿を有権者に用意して行く事もまた非常に重要な課題と言える。
30・76%と低投票率だった11月の市川市長選では、最多得票者ですら有権者数の7・1%しか得なかった。今年4月22日に実施された再選挙でも候補者が3人に減ったものの当選者は有権者の11・8%の支持しか得ていないことを考えると、特に都市部における低投票率には、民主主義や地方自治の質を向上させていくために何をしていくべきかと考えさせられる。
過去の首長選挙の再選挙の投票率を見ると、全ての再選挙で投票率は下がっていた。その意味では今回の市川市長選再選は3㌽とはいえ首長選の再選挙で初めて投票率が上昇した事には大きな意味を感じる。ただ一方で、自治体の長を決める選挙が33・97%と低投票率だった事には大きな責任と課題を感じる。
こうした問題も含め、地方自治における民主主義の仕組みについては、制度も含めてもう一度考え直す時期に来ているのではないか。

 
■市長不在と行政の継続性
 
市川市では市長任期が12月24日までだったため、再選挙により市長退任後から4カ月もの長期市長不在が生じた。
公選法34条では再選挙の期日は「事由が生じた日から50日以内に行う」とされているが、市民から異議申し立てが出されたことで当初1月14日予定だった再選挙は結果的に4月22日まで延期となった。
公選法213条では異議申し立てへの裁決は30日以内と定められている。1度目の市長選直後の11月末に出された異議申し立てを法律通りに処理すれば年内には裁決が終わり、県選管への審査申し立て期間21日を加えても、この後50日以内だと3月には再選挙を実施しなければならなかった。
市川市選管は、こうした公選法で定められた期限を「努力義務」であることを理由に予算編成や議会、年度末を避け、再選挙を4月22日実施とした。総務省に問い合わせても「努力義務であり、一概に法に抵触しているとは言えない。あくまで自治体判断となる」とのことだった。行政の都合が理解できないわけではないが、行政がこうした対応をすれば今後、努力義務への信頼はどうなるかと不安を感じる。
また市川市では4カ月もの市長不在期間を副市長が職務代理者として行政運営を担ったが、2月議会では「新しい市長が決まるまで新しい施策や事業展開には手をつけられない」と18年度当初予算では新規事業は一つも盛り込まなかった。
副市長自身に特別職である認識が薄いとも思うが、行政の継続性と政治判断の位置付け、職務代理の権限と役割、そもそも職員からの登用とはいえ、特別職の役割など改めて明確に示しておく必要を強く感じる。

 
■政策評価できる仕組み必要
 
市川市長選は結果的に見ると、自民党の分裂、国政における野党への追い風といった政局の影響や政治状況を大きく受けたものとなった。
本来なら有権者の生活への影響が最も大きいとも言える基礎自治体の首長選だが、実際には各候補が有権者に届く形で自治体課題を争点化することはできず、「各候補の公約の違いが分からない」との声まで耳にした。
本来の自治体経営では総合計画など自治体の目指すべき方向性に向けアウトカム(政策成果)に基づいて全体最適で政策は形成されるべきだが、選挙においては各候補者の公約を見ても各課題に対する部分最適の羅列になっていることが多い。
そもそも政策とは何かも含め、選挙における政策の比較や評価を有権者にも可能にすることが重要だ。
来年4月の統一地方選挙でも全国で多くの新首長が誕生するだろう。その際の公約の行政計画への反映の手法や、市長交代の可能性をはらんだ時期の骨格予算や補正による予算修正などの仕組み、首長と組織をつなげる人材の養成等についてもさらに整備する必要を感じる。