われわれは「18歳選挙権」実現で何を変えようとしたのか

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2015年6月17日に参議院本会議を傍聴したRightsメンバーなど関係者と法案提出者である船田元議員ら与野党議員が懇談しました

15年かけて訴えてきた「18歳選挙権」がついに実現

6月17日、「18歳選挙権法案」と呼ばれる改正公職選挙法が成立した。
選挙権年齢が引き下げられるのは、1945年に婦人参政権の導入と同時に25歳から20歳に引き下げられて以来、実に70年ぶりの快挙である。この日は、私が代表理事を務めるNPO法人Rights(ライツ)で、参議院本会議の傍聴を企画し、現役の大学生を含めた若者たちと共に、この歴史的瞬間を共有した。
法案の成立が決まると、場所を衆議院議員会館に移し、当事者世代である若者たちと共に、今回の改正案の提出者である船田元 衆議院議員(自民)、北側一雄 衆議院議員(公明)、武正公一 衆議院議員(民主)、井上英孝 衆議院議員(維新)、玉城デニー 衆議院議員(生活)、野間健 衆議院議員(無所属)に集まっていただいた。
残念ながら公務と重なり写真撮影に間に合わなかった逢沢一郎 衆議院議員(自民)も含め、この国の民主主義にとって非常に大きな一歩を分かち合うと共に、これをキッカケに、さらに被選挙権年齢の引き下げ、政治教育の充実と、若者の政治参画や民主主義の質の向上のために、引き続き活動していくことを確認した。
NPO法人Rightsは2000年5月、まだ大学生だった時に、同世代の友人たちと立ち上げた。同年11月15日、最初に仕掛けたのが国立青少年センターに大学生150名以上を集め、各党から国会議員を招いた国会議員シンポジウムだった。
当時の写真に写るのは、現在文部科学大臣を務める自民党の下村博文 衆議院議員、現在幹事長を務める民主党の枝野幸男 衆議院議員、現在世田谷区長の保坂展人氏らだ。自民・民主・公明・共産・社民・自由の若手中堅議員を前に、選挙権年齢引き下げの必要性について訴え、それぞれの意見を聞きながら議論した。一番右は、当時まだ大学生だった高橋亮平だ。

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2000年11月15日に国立青少年センターで150名を集めた国会議員シンポジウム。大学生の高橋亮平副代表コーディネートのもと、下村博文議員、枝野幸男議員ら自民・民主・公明・共産・社民の若手中堅議員が討論しています

「政治教育や意識の醸成」が先か、「制度改正」が先か

昨日も、15年もの長きにわたり、ライフワークとして行ってきた活動が実を結んだ喜びを当初から活動してきた同志たちと分かち合い、あらためて自分たちが主張してきたことが、ほぼ全て実現したことを確かめ合った。
その一つが、「政治教育や意識の醸成」が先か、「制度改正」が先かという、鶏と卵の議論だ。
当時、当事者である若者自身の多くが選挙権を求めていなかったこと、政治的無関心や若者の低投票率などの背景から、「制度改正よりも、むしろ政治教育など意識の醸成が先ではないか」という指摘を多く受けた。
しかし、この15年間を振り返り、どれだけ政治教育が進んだかという点を見ても、2002年にNPO法人Rightsで始めた模擬選挙(のちに事業独立)以外に、ほとんどこれといった進展はない。今回の「18最選挙権」の実現が確実視されてからのマスコミ報道を見ると、法改正よりも主権者教育に関する内容が多い印象を受けた。
政治意識の向上や政治教育の充実に到達点はなく、18歳選挙権実現によって政治主権者教育が注目される状況を見れば、「制度が意識を変える」という私たちのアプローチが有効だったことが分かる。

「選挙権だけの単独引き下げ」がスピード成立の策だった

公職選挙法の制度改正においても、我々の主張が数多く通った。
民法の成年年齢と同時に引き下げるべきだという主張が多い中、私たちは、公職選挙法上の選挙権年齢を単独で、先行して引き下げるよう求めてきた。
当時、引き下げ容認派の国会議員の中でも「同時引き下げ」が主流であり、こうした主張は我々だけであり、衆議院法制局ですら同時引き下げが妥当と言っていた。
われわれが「先行引き下げ」を求めていた理由はいくつかあるが、一つは、それぞれの法律に「立法趣旨」と「適正年齢」があるという考え方だ。
NPO法人Rightsでは、この間一貫して、「選挙権は教育と合わせて考えるべきであり、必ずしも成年年齢に合わせる必要がない」と訴えてきた。
権利として、できるだけ幅広い人に与えるべき選挙権が未成年にまで広がるという意味でも、選挙権の先行引き下げには大きな意味がある。
もう一つが、実現の可能性だった。
総務省は「議員立法になれば仕方がない」といったように半ばあきらめていたものの、法務省は成年年齢を引き下げることには抵抗していた。そのため、選挙権年齢の単独引き下げが可能だとしたのも法務省だが、実際には、これらが一体になればこれだけのスピードでは進まなかったのではないかと思う。
法案が成立した現在においても、実際には、選挙権年齢引き下げに反対である国会議員は多い。そのような状況の中、当時はむしろ選挙権年齢を引き下げたくない議員が、「成人年齢も同時に引き下げるべきだ」などと若者の味方であるかのように発言していた印象がある。
こうした内実については、別途あらためて書くことにするが、この「公職選挙法の単独引き下げ」こそが、われわれの描いた実現への一つの策だった。

学生の要求が法改正を導いた民主主義の新たなモデル

今回の改正公職選挙法の成立は、70年ぶりの快挙である事はもちろんだが、それ以上に、大学生たちが声を上げた要求が実際に法改正までたどり着いたという、新たな民主主義のモデルが実現した事に価値があるのではないかと思う。
われわれ自身も、この成立を最初の成功モデルとして、さらに二の矢、三の矢とすでに新たな仕掛けを用意している。こうした取り組みがドミノ式にこの国を民主主義大国へと導けるよう、今後も働きかけていきたいと思う。と同時に、若い人たちにも、当事者としてさらに積極的に社会変革に取り組んでもらいたいと思う。
今後の課題として求めていく新たな課題
改正国民投票法成立の日、NPO法人Rightsでは、今後の課題として、以下のものを発表した。

本日、参議院本会議で公職選挙法改正案が全会一致で可決され、成立しました。

特定非営利活動法人Rights(以下、Rights)は、2000年の結成以来、15年間にわたり、選挙権年齢の引き下げとシティズンシップ教育の充実を両輪に、若者の政治参画の環境整備を目指して活動してきました。

これまでに、三度の国会での意見陳述を始め、高校生や大学生等を巻き込んだキャンペーンを実施するとともに、若者政策の先進国である欧州各国(スウェーデン・イギリス・ドイツ)の調査研究にも取り組んできました。

今回、公職選挙法改正が実現したことを歓迎するとともに、Rightsとして、今後取り組んでいく主な課題は次の3つです。

(1)被選挙権年齢の引き下げ
被選挙権年齢については成人年齢まで引き下げることを目指し、関係官庁や与野党国会議員に働きかけるとともに、若者をはじめとした幅広い協働によるキャンペーンなどを検討します。

(2)選挙権年齢のさらなる引き下げ
選挙権年齢は18歳が世界的な標準ですが、近年はEU諸国を中心に16歳への引き下げや、引き下げに向けた議論が進展しています。海外における動向も踏まえながら、特に地方選挙権については地域の判断でさらに引き下げられること等を目指します。

(3)シティズンシップ教育の環境整備
2016年夏の参議院選挙に向けて、主権者教育の充実が急務になっていることを踏まえ、Rightsが今まで調査してきた海外先進事例の普及を通じて、シティズンシップ教育のあり方について議論を喚起します。具体的には、知識や体験に偏った教育だけでなく、生徒会活動の活性化も含め、若者が当事者意識をもって社会に参画できるような、実践的な教育環境の整備を提案していきます。

現在、若者を取り巻く環境は、世代間格差の是正を始めとした負担の再分配等、持続可能な社会システムへの転換が迫られています。そのためには、納得性の高い合意形成が必要であり、若い世代が当事者として社会的意思決定過程に参画していくことが重要です。

Rightsは、こうした問題意識のもとで、活動を活発化させていきたいと考えております。この度の公職選挙法改正に尽力していただきました関係各位に、厚く御礼を申し上げるとともに、今後ともRightsにより一層のご協力をいただきますよう、お願い申し上げます。

2015年6月17日
特定非営利活動法人Rights 代表理事
高橋 亮平

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高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、NPO法人「万年野党」事務局長。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。 テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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