持続可能な社会システムへの転換にはユース・デモクラシーが必要

日本の財政赤字は1,000兆円を超え将来の大きな負担となっている。年金など社会保障も賦課方式を続ける限り若い世代ほど損をする。こうした世代間格差は、単に一人ひとりの若者が苦しむだけに留まらず、5年程度のスパンで社会そのものが破綻につながる可能性が高い。このことから考えれば、持続可能な社会システムへの転換は必須であるが、今の日本は、長期的な視野を持つ政策が広い支持を得にくく、場当たり的なその場しのぎの対応が目立つ。非正規雇用の増加や就業率の低下、子育てなど人生前半の社会保障の不備や教育格差の問題など、若者を取り巻く政治課題は多いが、なかなか改善されない。それどころか高齢者の意見が過度に反映される政治状況がある。2007年の参議院議員選挙の際、0~30歳代の人口は全体の44.9%を占めているにも関わらず、総投票者数に占める割合はわずか23.5%になる。一方、60歳以上の高齢者の人口割合は28.1%であるのに対して、投票者数の割合は40.4%にも上る(総務省「目で見る投票率」と「人口推計」から作成)。若者の発言力は極端に小さく、その結果、政治による政策決定が高齢者向けにシフトする。こうしたシルバー・デモクラシー解消のためには、ユース・デモクラシーの構築が必須である。
 かつては欧米においても、日本と同様、若者政策といえば「青少年健全育成」や「国際交流」が中心だった。しかしこの20年の間に、若年就業率の問題などが社会問題になると、若者政策が雇用や生活環境などの分野にシフトし、さらには当事者である若者地震を参画させる仕組みへと変化している。
スウェーデンでは若者の65%が「自分たちの活動が社会に影響を与えられる」と認識している。同じことが日本ではわずか24%と極めて低い(YEC 2010 )。こうした背景にはいくつかの点があり、若者政策や若者参画の先進国と言われるスウェーデンの事例をいくつか紹介したい。
1点目が、民主主義を体感する仕組みである。学校民主主義(School Democracy)と言われる生徒会活動などをはじめとした意思形成過程や意思決定への参画の仕組みや、若者会(Youth Council)と言われる地域や自治体の中で若者たちが自分たちに関わる政策形成に参画する仕組み、さらには政党青年部での活動など、多くの若者団体が存在し、民主主義を支える選択肢が多く、層も非常に分厚い。
2点目は、若者政策を実施していくための仕組みである。青年政策を総合的に管轄する青年事業庁と若者政策担当大臣が存在し、他省庁や地域の若者政策のフォローアップ・レビューシステムがビルトインされている。日本が事前の政策評価に重点があるのに対し、事後評価が政策改善に反映される仕組みがあり、若者政策のPDCAサイクルが機能している。
3点目は、若者の声が反映される仕組みである。若者政策法の中で、政府が若者の声を聞くことが義務付けられており、実際に、若者に影響を及ぼす政策を立案する際は、若者に意見を聞かれている。同時に、若者団体を束ねるLSU(全国青少年協議会)という組織が、若者世代の利益団体としてロビー活動を行うほか、青年事業庁と連携して政策立案などを行う。
4点目は、人材の流動性の高さがある。地域組織から全国組織へのステップ、個々の団体から包括的なアンブレラ組織の役員に、こうした非営利セクターから政府の青年事業庁へ、政党青年部から国会議員へといった、複線化したキャリアアップの仕組みが出来上がっている。
こうした先進国の事例も含め、国内における今後の若者参画政策についていくつか提案をしたい。まずは、全体を包括する「若者参画基本法」の制定と「若者政策庁」や「若者政策担当大臣」の設置である。「選挙に若者の声を反映する仕組みの構築」「政界に世代代表を送る仕組みづくり」「若者世代が政治に直接参画する仕組みの実現」「政治教育の充実」といった点において、若者を参画の当事者として実際に声が反映される基盤整備を図る必要がある。
 まず、選挙権年齢の引き下げと世代別選挙区制度の導入がある。「日本国憲法の改正手続きに関する法律(国民投票法)」には、2010年5月までに公職選挙法の選挙権年齢を18歳に引き下げることが盛り込まれており、現在は違法状態となっている。一早く解決するとともに、さらに義務教育終了年齢である16歳まで引き下げることで、新たに500万人もの有権者が生まれることを期待したい。被選挙権については、成人年齢まで引き下げるべきである。「世代別選挙区制度」とは、これまでの選挙区が「地図」上に線を引いて決められているのに対し、「年齢」で線を引き、それぞれの世代に人口割合に応じて「議員定数」を配分する制度である。例えば、20代の有権者は、「20代選挙区」に立候補した候補者に投票することになり、人口割合に応じた人数が当選することになる。投票率に関係なく人口割合に応じて各世代代表の議席数が配分されるため、若者世代も常に一定の世代代表を輩出される仕組みになる。
また、政治教育の充実も必須である。その一つの可能性として生徒会の活性化が挙げられる。日本においても、「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」が導入されたが、今後、学校運営協議会に生徒代表を入れることを義務づけるなど、教育現場に生徒の声を反映する仕組みをつくることを提案したい。ドイツやスウェーデンなどでは、学校の運営を学校代表、保護者代表、地域代表などからなる学校協議会が担っており、そのメンバーには生徒代表も参加し、実際の学校経営のみならず、実際に州レベルの教育行政にも影響を与えている。
また、若者の直接参画の整備として、若者会(Youth Council)などの事例を国内でも整備するべきだ。若者に関わる政策について、とくに自治体現場において、政策形成から当事者である若者自身に担わせる仕組みの整備である。
アメリカには大学院生や若手研究者などが、正副大統領の特別補佐官や長官の補佐官を務めたり、大統領府や行政府などで調査をはじめとする具体的な活動を行う「ホワイトハウス・フェロー」制度や「ホワイトハウスインターンシップ」制度があり1,000人ほど働いている。
今年度、千葉県松戸市では政策推進研究室の事業として「政策インターンシップ・フェローシッププログラム」を開始した。国政における若者参画の政策転換の必要性はもちろんだが、実態としての転換を目指すためには、「民主主義の学校」と言われる地方自治の現場で、民主主義を体感する仕組みをどう教育現場と連携しながら実践できるかが重要である。
持続可能な社会システムへの転換のためにも、この国のユース・デモクラシーの構築は急務であり、震災を受けたこの国の未来を切り開くためのも、国を支える仕組み自体が大きく見直されることを期待したい。