“若者政策”においても日本は“ガラパゴス”だった。

■“ガラパゴス化”した日本の“若者政策”
日本の中で“若者政策”と聞くと、多くの人が青少年の健全育成や国際交流などを思い浮かべる。ボーイスカウトや子ども会などが頑張っているイメージだ。

こうした状況は、欧米においても、かつては同じだった。

ところが、この数十年もの間に、欧米における“若者政策”は、労働雇用、そして若者参画へと大きく進化している。スマートフォンへの転換の遅れが指摘される携帯電話だけでなく“若者政策”においても日本は“ガラパゴス化”していると言えるのだ。

2010年5月、中でもEUにおける“若者政策” を引っ張ってきた先進国であるスウェーデンを調査視察で訪れた。日本人にとって「ゆりかごから墓場まで」として知られる高福祉高負担のこの国は、なぜ、“若者政策”においても先進国なのだろうか。日本が、ガラパゴスと化している間に、“若者政策”の国際標準がどれほど進化してきたのか見ていきたい。

■若者の65%が「社会に影響を与えられる」
若者の65%が「自分たちの活動が社会に影響を与えられる」と答えている。

もちろん日本での話ではなく、スウェーデンで実施したアンケート調査(Youth Empowerment Committee 2010)の結果である。同じアンケートを日本で行ったところ24%と極めて低い。 逆に、「自分たちの活動が社会に影響を与えられない」と考えている若者は、スウェーデンが23%なのに対して、日本では75%にまで上る。

こうした状況は、投票率にも表れており、スウェーデンでは、すでに18歳選挙権が実現しているが、若者の投票率は70%を超え、50%未満の日本とは大きく異なる。

こうした若者の意識の高さの違いに“若者政策”の差が表れているように思う。

■省庁と共に若者が国の政策を動かす
スウェーデンでは、“若者政策”を実施する仕組みが様々な形で整備されている。その一つが、若者政策担当大臣の存在であり、青年事業庁による他省庁や自治体の若者政策のフォローアップ・レビューシステムである。こうした仕組みが“若者政策”の実施に対して責任を明確にし、PDCAサイクルにより常に見直し改善される仕組みが確立している。

また、多くの若者団体が積極的に活動し、そこに政府から補助金を出すことで、民間レベルの“若者政策”活動がサポートされている。

代表的な若者団体としてLSU(全国青年協議会)を紹介したい。LSUは文化団体、生徒会組織、環境団体、政党青年部などで構成された若者団体を束ねるアンブレラ組織であり、政府やEUの若者政策に対するロビイングやパブリックコメントに対する意見表明、政策提言などを行うほか、新たな若者政策を実施する際には政府がLSUに意見を求めることも多い。こうした際、若干23歳のLSU代表に対する政府のカウンターパートは大臣または青年事業庁長官であり、さらに代表はEUや国連の会議などで演説なども行うというから驚かされる。スウェーデンには、こうしたLSUに代表されるような若者の声を大きくする仕組みが様々ある。

もうひとつ紹介したいのが人材の流動性の高さである。訪問でヒアリングした青年事業庁の職員も、かつて若者団体の代表者だったが、現在は政府の側から同様の活動をサポートしていく立場にある。役所にとっても現場を分かっている人が入るというメリットがあるほか、キャリアパスが非常に多様化しており、若者団体等で活動しやすい環境にもなっているのだ。

こうしたこともあって、スウェーデンでは、特定の活動に関わっている子どもや若者が多いこともそうだが、そうでない子も含め、主体的に社会に関わっている割合が高いというのも大きな特徴といえる。

■学校運営には生徒代表も参画する
スウェーデンに行くと、省庁であれ、学校であれ、NPOであれ、訪問する度に様々な人から“デモクラシー(民主主義)”という言葉を聞かされる。

日本で「民主主義」などと言うと、教科書では読んだことはあっても「多数決で決めること」程度にしか印象がない人が多く、場合によってはむしろ特殊な人が使っている言葉だとネガティブな印象を持っていたりもする。ところが、スウェーデンでは、この“民主主義”という言葉が広く共有されていると共に、民主主義を体感する仕組みが様々なところに、自然とちりばめられている。

その一つのモデルが学校である。学校では常に“スクール・デモクラシー(学校民主主義)”という言葉が聞こえ、生徒会役員の代表は、学校評議会にも参画し、教師や校長、保護者らと共に学校の意思決定を行う。つまり生徒が学校の運営に関わることができるのだ。勉強のできる先生と仲のいい優等生がやるといった生徒会のイメージとは大きく異なる。こうした生徒会組織には全国組織があり、生徒会が保護者や教師と対等に力を持つためのサポートまで行っているという。

こうした取り組みのほかにも、学校での政党討論会の実施、地域での若者参画、政党青年部の取り組み等、若いうちから政治や参画を体感する場が用意されている。どこがというわけではなく、様々なところに“若者が参画する場”がちりばめられ、その結果、民主主義を支える層が分厚くなっている。

■さらに進化し続けるEUの“若者政策”
ここまで“若者政策”先進国の現場を紹介してきたが、EUの“若者政策”は、このスウェーデンを中心にさらに進化しようとしている。

2009年、「若者政策の新たな枠組み 2010-2018」がEU理事会で採択された。これは2018年までのEUの若者政策を展望する枠組みだが、その目的を、「教育・労働市場で全ての若者に対してより多くの平等な機会が与えられること」と、「若者の積極的シティズンシップ・社会的統合(social inclusion)・連帯(solidarity)を促進すること」の2点とした上で、若者政策の重点分野8項目に対してそれぞれ具体策が示されおり、これまでの若者政策を発展させる位置づけとなっている。

代表的な例をいくつかあげると、教育・訓練として「若者への高等教育や職業訓練に対する平等なアクセスの保障」「早期退学への対処としてユースワークやノンフォーマル教育の機会開発」、雇用・企業として「需要のある仕事に就けるためのスキル投資の拡大」、参画として「国レベルの若者政策について、若者との対話や若者参画の仕組みの開発」、社会的統合として「社会的排除、若者の貧困、およびそれらの世代間連鎖防止」などである。

国内においても、若者の雇用、社会保障など、これまで以上に世代間格差が社会問題化してきていいる中で、世界の先進事例にも目を向けながら、早急に取り組んでいくことが求められる。

■今回のポイント
・日本の“若者政策”は世界から取り残されている。
・世界では若者自身が当事者として様々な形で政策形成過程に加わっている。
・教育・雇用・参画など若者に関わるすべての政策の転換とその過程への参加が求められる。