人口減少・成熟社会の社会保障改革を考える

昨日の市議会議員特別セミナーの2コマ目は、広井良典 千葉大学法経学部教授を講師による「人口減少・成熟社会の社会保障改革を考える」でした。
冒頭で、人口減少社会の到来を上げました。
、当たり前のことですが、その背景には、平均寿命が延びたことで先送りされていた世代の死亡者急増と出生率の着実な低下があります。
出生率低下については、民間シンクタンクによる面白い資料があり、25~34歳の有配偶出生率」に対して、「保育所在所児割合(+)」「延長保育実施割合(+)」「男性通勤時間及び仕事時間(-)」「平均気温(+)」「教養娯楽費割合(-)」「消費者物価地域差指数(-)」の6つが影響与えていることがわかったと言います。
この分析を解決することがそのまま出生率向上に反映されるかは定かではありませんが、今後は、大都市圏において少子化・人口減少と高齢化はさらに加速が進み、これまでの価値観やライフスタイルが変化することが予想され、“成長・拡大”“豊かさ”の意味の見直しが必要だとしました。

また、これからの社会保障については、日本の社会保障給付費は右肩上がりとなり、85.6兆円と国家予算を上回っているということ。
しかし一方で、社会保障給付費の対GDP比の国際比較を見ると、スウェーデン、フランス、ドイツが30%弱でほぼ並び、イギリスが20%強で、日本、アメリカが15%と未だに低いのが現状です。
また配分を見ると、70.8%が高齢者関係、子ども・家族関係が4%であり、今後は社会保障の配分を子どもや若い人へと変えて行かなければならないとしていました。
こうした指摘は、まさに私たち世代に向けられたものであり、今後の一つの課題を確認しました。
また、これまで日本の社会保障費が低くすんだ理由としては、カイシャと核家族という“インフォーマルな社会保障”の存在と、公共事業が事実上「社会保障的な機能」をはたすという“公共事業型社会保障”があったと言います。
これからの日本の社会保障としては、全分野重点型、年金重点型、医療・福祉重点型、市場型の4つの選択があるとした上で、医療・福祉重点型が妥当だろうとのご意見でした。
日本の患者自己負担(医療費全体に占める%)は、フランス10.0、ドイツ10.4、イギリス11.0、アメリカ14.1、日本17.3と先進諸国の中で最も高い水準であり、少なくとも、現在進められつつある患者自己負担拡大や混合診療拡大等の方向には疑問を投げかけていました。
さらに、社会保障をめぐる新しい課題と方向として、近年 会社や家族の流動化・多様化、慢性的な供給過剰の中でリスクが人生前半にも広く及ぶようになるなど、今後は「人生前半の社会保障」の重要性があるとしていました。
所得格差の拡大とともに“共通のスタートライン”に立てるという状況が、危ぶまれてきた中で、個人のチャンス(機会)の平等を通じた社会の活性化が重要ともしていました。
公的教育支出(対GDP比、%)の国際比較においても、OECD加盟の30か国中、最新ではトルコを下回り最低となったと言います。
各個人が人生の様々な段階において、「機会の平等」を得られることの保障が必要であり、個人の自己実現の機会を保障する制度としての社会保障の重要性を強調していました。そのためには、将来へのツケ回しの撤廃のための消費税、“共通のスタートライン”に立てるよう人生前半の社会保障に充当する相続税(cf.資産を含むすべての所得に課税する実質的な社会保障目的税であるフランスの一般社会税)、環境負荷を抑制しつつ福祉水準を維持するための環境税(ドイツのエコロジカル税制改革)などの財源も考えなければなりません。
社会保障と福祉国家のモデルは、北欧やイギリスなどの「公助」原理による普遍主義モデル、ドイツ、フランスなどの「共助」原理による社会保険モデル、アメリカなどの「自助」原理による市場型モデルがあります。
日本の場合は混合型であり、当初は社会保険モデルでありながら、基礎年金など一部普遍主義モデルであり、給付規模は市場型モデル並みということになります。
これまでは、失業問題を失業→公共投資&需要拡大による解消→労働生産性の上昇→失業の再度の発生→・・・とすべて「成長によって解決」してきましたが、こうしたサイクルからの脱却し、「定常型社会=持続可能な福祉社会」のビジョンを持ち、「豊かさ」の意味の問い直しが必要だとしていました。
定常型社会においては、時間の消費が中心となる時代になる。
「コミュニティ、自然、スピリチュアリティ」をキーワードに、賃労働時間の減少分を「新しいコミュニティ」へ“時間の再配分”を行うなど、様々な余暇、生涯学習、ケアなどに転換していくべきだと言っていました。
また、研修の中で、オランダの「1.5モデル」の実践VTRを見ました。
オランダでは、民間で38~40時間働き、公務員で36時間、それ以下がパートタイマーという位置づけだと言います。
ただ、パートタイマーも正規雇用であり、時間当たりの給料はもちろん、社会保障や有給もフルタイムと平等に扱われると言います。
VTRの中では、1.5モデルの象徴的なモデルとして、夫婦ともにパートタイマーとして週4日勤務で働く家庭を取り上げていました。
週末2日は家族で過ごし、週1日ずつを父親が子育てと家事をする日、母親が行う日とし、残り2日を保育園に預けて共働きという形式にしていると言います。
幸せそうに家族で過ごす姿は非常に印象に残りました。
オランダでもまだ稀の例とのことでしたが、今後のライフスタイルに大きな可能性を見た気がしました。
また、パートに切り替えて、スキルアップのために学校にも通っている人の例もありました。
日本においても「同一労働同一賃金」が進めば、その選択も広がるように思います。
また、定常型社会は自ずと分権型社会になってくるとも言っていました。
日本においては、強い成長志向と小さな政府によるアメリカ型の社会モデルというよりは、定常(環境)志向で(相対的に)大きな政府であるヨーロッパ型の社会モデルに目を向けるべきだという捉え方は、本当に共感しました。
この研修は、将来の社会構造のあり方を示しながら、私たち世代の今後の施策についても提示してもらった気がしました。
こうしたこともヒントにしながら、さらにつめて行きたいと思います。